中国語では話し言葉と書き言葉の違いが大きい

香港で使われる中国語の書き言葉

香港スターフェリーの標識。書き言葉で書かれている。解説は一番下。

 

ビジネスメールや公的機関・商店などの標識での表記は話し言葉の中国語とは異なります。友人同士のメールなどでは話し言葉のまま打ちますが、但し方言のまま漢字を打つ場合と、話すときは方言で話す間柄同士でもメールで書くときは標準中国語で書く場合の2つがあります。社内メモなどでも話し言葉で書くと、どことなく学がないように見えてしまいます。

このような、書き言葉、若者言葉、敬語など社会言語学的特徴や文体論(stylistics)は外国人にはなかなか難しいものです。

口語:書面語

では以下に、左側に口語的な表現、「:」コロンを挟んで右側に書き言葉を紹介していきます。

  • 把:将
  • 的时候:时
  • 已经: 已 「已收到(受領いたしました。)」のように使います。過去形の「了」の書き言葉とも言えます。
  • 因为、、所以:因、、、故
  • 没有:无 文章の中での動詞の否定形としては使えず、「無糖」などの形で使われます。
  • 还没有:未
  • 不要:勿 毋 香港では特に「勿れ」が使われます。さらに文学的なニュアンスがあるのが「毋」です。「毋忘記9.18(盧溝橋事件=満州事変を忘れる毋かれ」のように使われます。
  • 是:为
  • 就是:即/则/便是
  • 和: 及/以及/与/同 複数の主語があるときなど、主語の位置で「及び」を使うことはできません。
  • 在:于 例えば、薬の注意書きによく「密封放置于阴凉处。」と書かれています。これは完全に書き言葉で、話し言葉ではこんな言い方は絶対にしません。「於いて」は場所だけでなく、時間に関しても使われます。
  • 这/这里:此/此处 日本人にとって左の口語より右の書き言葉のほうが理解できます。
  • 像:如
  • 为什么:为何 何故 「何故」はほとんど見かけませんが、前者はよく使います。
  • 哪里:何处 この「何処」の言い方は文学的な場合のみに使われますので、書き言葉でも口語と同じ言い方が普通です。
  • 什么时候:何时/几时 「何時」はビジネスメールでも使います。
  • 什么:何 実際に見たことはありませんが、他の「何処」「何故」等から帰納的に導きだしました。
  • 怎么样/怎样:如何
  • 如果: 若/ 如
  • 到: 至 日時を表す時に使います。
  • 可以:可 2文字を一文字にするのはよくあります。また「即可」のかたちで「~すればよい」という意味で用いられます。
  • 帮助:助
  • 应该:应/该
  • 也:亦 香港で「亦(また)」は使われることが多いです。
  • 比较:较
  • 说:曰/说道/道 文学的なニュアンスを出す場合にのみ使われます。
  • 今天:今日 昨日 明日
  • 超过:逾
  • 是不是/是、、吗:是否 /能不能 能否/ 可不可以/可以、、吗 可否

ここに挙げたものは一部です。

日本人には書面語の方がわかりやすい

この様に考えると、日本人は漢文(古い中国語)の素養があるので、日本人には書き言葉の方が読みやすいです。特別な状況だけで使われる書き言葉もあります。例えば、履歴書等で「私」を表すのに「本人」「本人是某某大学的学生。」と書きます。漢文がわかるので、まるで外国語ではないかのように理解することができます。

日本人から見て意外と使われないのが、「之」です。現代中国語では文学的なニュアンスを出す場合以外使われません。例えば、「文化之旅」のように使われます。

香港での表記が中国本土より書き言葉的要素が強い原因として、香港で昔から使われてきた表現をそのまま使っているのに対して、中国では学歴の低い一般市民でもわかるような表現で書いているので、香港と中国でこのような差が出たのでしょう。

上のスターフェリーの写真を解説します。

此層可容搭客299人.

此:口語では这[這]と言います。この写真の場合「本層」でもいいです。

可:可以

容:容納 「収容」、つまり「乗せることができる」という意味です。

搭客:広東語的な書き方です。標準中国語では「坐」、「乘坐」と言います。

まとめると、文全体を口語的にすると、

这层可以容纳299个客人。

収納「容纳」なんて言い方は話し言葉でつかいませんので、話す時にはこのような言い方はしません。

 

 

いつか英語の書き言葉についても理解してまとめてみたいです。

中国語上級作文

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 たぶん、下の教科書には書き言葉の解説があるでしょう。

ビジネスメールの中国語

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 <中国語>