外国語の単語の使い方は厳しいと思ってしまう現象

外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)の p17の実験では、人が外国語を母語とは違う見方で見ているという例を示しています。

実験では、オランダ人に次の英単語の使い方は文法的に正しいかを判断してもらいました。

  1. break a cup
  2. break the record
  3. break the tradition

正解は全部英語として正しいです。被験者の中には2.と3.が正しくないと思った人が多かったのです。実はオランダ語のbrekenでも上の全ての表現が英語と同じ表現で更に正しいのに、ひとたび英語という外国語のことになると、正しくないと考えたようです。

このように、人は外国語の使い方を厳しく制限して考える傾向があるのです。上の1.は典型的な意味で、他は比喩的な用法の非典型的な意味で使われています。

母語は外国語学習にどのような影響を与えるのか

ちなみに、この実験は母語がどの程度外国語に影響を与えるのかという研究(言語転移)のものです。この実験結果を解釈するにはまだデータが不十分です。無理やり母語の影響をなくそうとしているのか、或いは外国語では誤解を避けるために、比喩表現表現を避けるのかはわかりません。

また、この実験は紙の上での反応で、実際に考える時間が短い会話などでも同じ現象が起こるのかは、この実験だけからではわかりません。

英語から日本語へ直訳した例

例えば、p19に会話では母語の影響があるのかもしれないという事例が紹介されています。あるアメリカ人がGive me a break.を直訳して「休みをください」と言いました。ここではbreakという言葉の「休憩」という意味を「冗談などをやめる」という非典型的な意味でつかっている。

 

<外国語の感覚と学習法>