母語話者数世界第9位の日本語は少数言語なのか

用語としての「少数言語」(英語のminority language)は定義上、少数民族が用いる言語などを指し*1、日本でいうアイヌ語などが該当するので、この定義では日本語は少数言語に該当しません。

少数言語 - Wikipedia

今回は、日本語という言語は世界の中でちっぽけな存在なのか、という論点で考えます。

何を基準にするかで話は変わってきますが、第一言語(母語)話者数から見ると日本語は世界9位なので決して低くはありません。しかし、第二言語として言語を使っている人を含めると日本語の順位は少し下がります。

世界の言語

日本語より母語話者数が少なくても国際的(ヨーロッパなど)に広く使われている言語(フランス語、ドイツ語など)もあります。一方で、日本語は日本国外で使われるのは限定的です。

国際的に影響力もあり、多くの国で使われ、学ばれている英語は断トツで大言語ですが、他の言語は英語ほどのインパクトはありません。

いずれにしても、何を基準に小さい言語なのかを決めるのは難しいです。

話者数ベース

話者数(母語)で言うと、日本語は世界第9位です。世界全体の言語数は学者によって差がありますが、一般的には約6000と言われています。6000の内の9番目なので上位にランクインしていると言えます。

日本国の人口は世界10位であり、規模が大きいので当然です。

母語話者別のランキング(第二言語話者除外)

  1. 中国語(普通話)約11億
  2. スペイン語 約4億
  3. 英語 約3.3億
  4. ヒンディー語 2.6億
  5. アラビア語 2.4億
  6. ポルトガル語 2億
  7. ベンガル語 1.9億
  8. ロシア語 1.6億
  9. 日本語 1.2億
  10. ラフンダー語(パキスタン)9000万
  11. ジャワ語(インドネシア)8400万
  12. ドイツ語 7800万
  13. 朝鮮語・韓国語 7700万
  14. フランス語 7600万
  15. テルグー語(インド) 7400万
  16. マラティー語(インド)7200万
  17. トルコ語 7100万
  18. タミル語(インド、スリランカ、シンガポール)6900万
  19. ベトナム語 6800万
  20. ウルドゥー語(パキスタン)6400万
  21. イタリア語 6300万
  22. マレー語(マレーシア他、インドネシア語含む)6000万

Src:Summary by language size | Ethnologue

第二言語話者含むと変わる

但し、第二言語として使っている人を含めると順位も変わります。第二言語話者には学習者は含みません。

下の統計によると、フランス語とウルドゥー語(パキスタンなど)、マレー語(インドネシア語含む)*2がそれぞれ1.6億、1.6億、2.1億人と、日本語を追い抜くので、日本語は12位に変わります。

List of languages by total number of speakers - Wikipedia, the free encyclopedia

 

第二言語にはいろいろなシチュエーションがありますが、例えばフィリピンで普段は地元のセブアノ語(Cebuano)を話していて、仕事やニュースなどでは英語を日常的に使っている場合などが挙げられます。

 

第一言語ベースで考えると、意外にもフランス語話者よりも日本語話者の方が多いようです。フランス語を公用語としている国は51もあり、国際的な場面でも使われるのにも関わらずです。

比率で見る日本語

順位ではなく、数で見てみます。日本語は全世界の内の2%未満なので、全世界に占める比率は大きくはないです。円グラフで見ると以下の通りです。(src: National Geograhic)

http://voices.nationalgeographic.com/files/2011/03/Top-25-Languages-Chart-2-thumb-425x323.jpg

世界9位の母語話者数の規模

ちょうど日本語と同じくらいの規模の言語がないので比較しにくいですが、日本を外から見てみるために、ベンガル語を比較対象として考えます。

ベンガル語(Bengali)はバングラデシュとインドの東部の州で話されている言語で、母語話者数は日本語の約1.2億人を凌ぐ約1.8億人です。

しかし、国際社会での影響力は大きくないようです。

参考:World language - Wikipedia, the free encyclopedia

 

つまり、母語話者の規模と国際的な影響力は相関がありません。日本語が9位ですが、見方によっては大言語とは言えないでしょう。

日本語を公用語とする国・地域が2つ

日本語を公用語としている国・地域の項目が2になっています。調べてみたらパラオのAngaurという地域で公用語の地位が与えられているようですが、現状どうなのかはわかりません。

実際は一部のお年寄りだけで、あまり使われない「公用語」かもしれません。詳しく理解する前に一喜一憂しないほうが良いです。

ref:

公用語以外での日本語

『台湾に生きている「日本」 (祥伝社新書149)』などによると、台湾で別の民族同士での会話に共通語として日本語が使われるケースもあると聞きます。念のため細くしておくと、台湾には漢民族系以外にも原住民と呼ばれる人たちがいます。戦前の日本語では彼らは「高砂族」と呼ばれていました。

日本語の第二言語学習者

学習者の数はその言語への影響力を測る指標にはなりますが、話者数とはまた違う概念です。ちょっとかじっただけで使えない人も多いです。

また、海外のホテルや観光地で日本語が少し通じたからと言って日本語が話されているとは言い難いです。その日本語が使われる場面が限定的で、次の世代へ継承される可能性が低いからです。

ビジネスの場面では影響力があるようです。日系企業で働く外国人(中国人、タイ人、インドネシア人など)は日本語を学ぶ人もいます。

 

 

 

国連の公用語

国連本部の旗

政治的影響力で国力を比較してみたいのですが、客観的な基準がないので国連の公用語を参考にします。

国連の公用語は

  1. アラビア語
  2. 中国語
  3. 英語
  4. フランス語
  5. ロシア語
  6. スペイン語

日本語は国連の公用語ではありません。ドイツ語も入っていません。

国連の職員になるには、公用語の内2つを使えないといけないので、日本語話者は2つの外国語を習得しないと国連で働けません。

なので、日本人にとって国連職員のハードルはちょっと高いです。

参考書:『国連を読む 私の政務官ノートから』

この点で言えば、日本語は世界の大言語ではないと言えます。

 

では、国際連合の関連機関の公式ホームページは何語で書かれているのかを見てみましょう。

国連の公用語の6言語で書かれています。日本語はありませんので、日本人が見るには不便です。

ただし、公用語国の人がこれらのサイトを頻繁に見るのかはわかりません。情報を得やすいのは確かです。

 

比較として、世界銀行(World Bank)には日本語版があります。

国連以外の国際機関:

ヨーロッパで広く使われているドイツ語も含まれていません。しかし、ドイツ語は他の国際機関では公用語のステータスを与えられています。

ref: List of territorial entities where German is an official language - Wikipedia, the free encyclopedia

日本語が公用語の国際機関(international institute)は見つかりませんでした。IMF(国際通貨基金)では日本語への同時通訳が入るとのことです。

List of official languages by institution - Wikipedia, the free encyclopedia

 

日米主導で設立したアジア開発銀行のホームページが英語と中国語なのは興味深いです。

http://www.adb.org/

国際的ビジネスシーンでの言語

客観的なデータは探していませんが、英語以外の国出身者同士でも英語を使うことが圧倒的に多いと思われます。

第三者の言語で英語以外を使うシチュエーションはかなり少ないと思われるます。

国際ビジネスの点で、日本語が特別低いとは言えません。

相手の言語を話す場合は、外国人が日本語を覚える場合もありますが、日本人が相手の言語を覚える場合もあり、どちらが相手の言語を覚えるケースが多いのかのデータを見ないと分かりません。

本当に国際語なのか?

ロシア語はロシアだけでなく、東ヨーロッパや中央アジアなどの広い地域でも話されています。タジキスタンやウズベキスタン、キルギスやモンゴルなどロシア語話者は多かったです。

国際語として機能しているのですが、域外に出ると話者は一気に少なくなります。

同じように、フランス語やドイツ語もヨーロッパでは国際語として機能していても、例えば東アジア地域では現在、共通語としての使用はありません。

通用する範囲が一番大きいのは英語だと思われますが、英語を知らない地域もあるはずです。私も知らない地域のことはよく分からないので、何語が国際的によく使われる言語なのかわかりません。

 

とりあえず、国際共通言語というのは限られているので、世界のその他ほとんどの言語が国際共通言語ではなく、日本語の存在感が特別小さいということではありません

 

まとめ

母語話者数ごとの順位では、日本語は9位なので上位にある。しかし、第二言語話者を含めると少し順位が下がる。

現時点では日本語は、どの国際機関でも公用語として採用されていない。

 

<関連記事>

*1:少数民族に限らず、スペインのカタルーニャ語を話すカタロニア人のようなケースもあります。

*2:マレーシアのマレー語とインドネシアのインドネシア語がなぜ同じ言語としてカウントされるのかはインドネシア・マレーシアの民謡ダンスがかわいいにて。