なぜ言語学者は英語学習のことを語らないのか
この投稿は、『外国語学習の科学』という本の内容を私自身の解釈を加えてアレンジしたものです。
巷に出ている英語学習や外国語学習に関する本や噂の99%は言語学者以外によるものだ。例えば、赤ちゃんが言語を覚える方法が一番自然で効率も良いと言われている。だから、英語もたくさん聞けば話せるようになると商品や本が出て話題になる。しかし、これらは言語学の科学的根拠は薄い。
例えば、言語習得には臨界期(critical period)と言うものがあり、7歳前後から言語習得能力が著しく低下すると言語学では仮説立てられており、それの説から見ても、幼児と同じ方法は使えないはずである。ついでに言うと、外国人に言語を教える人にも言語学的知識や、強いて言えば外国語習得の経験すらない人がほとんどである。
言語学者はいくつの言語が話せるのか?
では、言語の専門家はなぜ語らないのか?David Crystalが著書の中で本の最初の方で自身のエピソードを紹介している。(たしかJust A Phrase I'm Going Throgh: My Life in Language)
彼が初めて会う人たちに自己紹介で言語学者だと言うと、よく「何語が話せますか?」や「いくつ言語ができるのですか?」と聞かれる。最初戸惑った。言語学者は言語に関する研究しているが、だからと言って色んな言語ができるわけではない。
一般人の誤解を解くには、先ず言語学というものから説明しないといけない。なぜなら、一般人は言語学を自分の想像で理解しているだけで、実際に内容を知っているわけではないからである。
言語学の下位分野
言語学は文法や言語の歴史を研究する分野があるのは想像できるだろう。他の分野の一つに、言語習得という分野があって、さらにその下に第二言語習得という分野がある。これが外国語学習と最も関係のある分野になる。図にすると
言語学>応用言語学>言語習得>第二言語習得(SLA=Second language acquisition)
となる。しかし、このSLAの研究目的は人が如何に言語を習得するかであって、外国語学習を容易にすることを目的としていない。
ここまで語ってみたが、これを日常会話で一般人に話すのはかなりやっかいである。ちなみに、上述のCrystal氏はこんな説明をせずに「英語の他に、ゲール語とフランス語が少々できます」と答えるそうだ。彼の本を数冊読んだ印象では、彼の専門は第二言語習得ではなさそうだ。
外国語学習を科学的に開発する分野
上の問題に戻る。なぜ、言語学者は英語学習を語らないのか。それは、その分野がないからである。
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