広東語話者は話す相手に応じて話す言語をどうやって決めているのか
広東人ばかりの場所では、相手が広東語がわかる可能性が高いので、知らない人でも広東語で話しかける。外地から来た人が多い場所では誰が広東語がわかるのかがわからないため、広東人同士でも、中国語で話すことがあり、後で相手が広東人だとわかると、広東語に切り替えたりする。しかし、とりあえず広東語で話しかけて、相手が広東語がわからないとわかると、中国語に切り替えたりする人も多い。
目上の人と話す時
また、校長先生(偉い人)と普通の先生が広東人同士なのに中国語で話しているところを見たことがあります。中国語で話すほうが丁寧というか、広東語(方言)だとリラックスしすぎな雰囲気があるのかもしれません。
他の地方の人が混在している場合
広東語がわかる人とわからない人が混在している状況ではどうでしょうか。これは状況によって違いますが、親しい仲なら広東語がわからない人の前でも、広東人同士だけで話す場合は方言で話します。
標準語が話せない人
お年寄りは中国語ができない人もいるため、他の省から来た人と話ができない。一度、広州の隣町の肇慶出身のおばあさんが広州の八百屋で言葉が通じず、通訳を頼まれたことがある。内容は「すいかを半分に切ってくれ」というものだった。自分の国で、出身地の近くなのに言葉が通じないというのは面倒なことだなと思った。
書くときはどうするのか
人にもよりますが、一般的には方言で書くことはあまりありません。
基本的に紙に書いたり、メールやパソコンで文字に起こしたりする時は方言では書けないことが多いが、(他の方言についてはわからないが)広東語に関していうと、文字に起こすことができる。中国語にはなく、広東語独特の表現に対しては、「冇」「曱甴」「喺」などの方言文字がある。しかし、文字のない言葉や表現もある。
普通の文字で代用
方言文字の例としては、「咗」のような中国語にない文字を打つ場合、同じ発音の「左」を当てたりしている。相手が広東人だとわかっている場合、メールや中国版ツイッター(微博)などで打つ時はこの方法を使う。
標準語と混ざる
ただし、香港やマカオの人はしないと思うが、大陸の広東人が文字を打つ時は中国語と広東語が混ざった表現になってしまうときもある。例えば、
「系啥?」と打つことがある。「系」というのは中国語の「是」を広東語の言い方を簡体字で書いていて、「啥」という言い方は中国語で何という意味で、広東語にはこの言い方はない。
しゃべるときとの比較
中国人が中国語を話している時に、方言では表現できるが、中国語ではどう表現すればいいのかわからない時がある。そういう時に気付かずに方言で言ってしまうこともあるらしい。これは広東人以外にも言えることである。
新聞等メディアの広東語
例えば、Apple Dailyという新聞の香港版には広東語で書かれた箇所が多い。特に会話部分や芸能ニュースなどは広東語で書かれている。中国人には読めない。是非、香港やマカオで見てみて欲しい。
http://hk.nextmedia.com/香港版アップルデイリー。ちなみに、中国では見られません。この新聞は某党が大嫌いなのがにじみでるほど批判しているからでしょう。
しかし、これは例外で、香港で出版される本でも中国語で書かれている。広東語で文章を書くことは例外的である。本やブログで広東語で本が出版されたと書かれていることがあるが、間違いだと思う。香港(とマカオ)で出版されたということだと思う。
『外国語学習の科学ー第二言語習得論』本に広東語で本が出版されたと書かれている。
広東語が使われている国・地域
広東省
広東省には広東語ではない方言を話す地区があり、彼らの中には広東語ができる人とほとんどできない人がいる。広州、東莞、シンセンなど珠江デルタの大都市では、出稼ぎや進学で広東省以外から来た人が多いので広東語がわからない人も多い。それ以外の田舎では地元の人ばかりなので彼らは中国語が生活に必要がない。高齢者には中国語ができない人が少なくないが、田舎ではその傾向が一層強い。
香港・マカオ
お年寄りは中国語が一言もわからないことがある。生活は広東語で使っているが、thank you 、sorry、 bybyeや数字などはわかりますが、それ以上の表現を英語で言ってもわかりません。
マカオはまだよくわかりませんが、これから調べるつもりです。たぶん、多少のポルトガル語が混ざっているはずです。
広西省
お隣の広西省にも広東語話者がいます。広西省はチワン族の自治省となっていますが、漢族も多いですし、僕が大阪の国立民族学博物館のビデオで理解した限りでは、チワン族は風習や言語などで漢族の影響が強く受けています。また、一説によると、広東語のベースこそがチワン語だとも言われています。確かに、広東語には中国語とはかなりことなる特徴もあります。
マレーシア
マレーシアでは都市部に中華系住民が多いです。マレーシアの中華系住民は広東省をルーツに持つ人だけではありません、マレーシアなどの海外華僑には以下のルーツを持つ人がいます。
- 広東人
- 福建人
- 潮州人
- 客家人
- 海南人
- その他
マレーシアの場合、広東語をよく使う地域は
KL(首都クアラルンプール、吉隆坡)
イポー(Ipoh、怡保)
だと聞いています。
クアラルンプールでは中華街Petaling Street(茨廠街)周辺のお店で広東語をよく聞きます。
ペナンは福建人が多いと言われ、今でも閩南語を使う人がいます。しかし、広東語を話す住民もいます。
シンガポール
マレーシアに対して、シンガポールでは広東人は相対的に少なく、一番多いのは福建人です。僕は友達の友達がキリスト教徒で、一緒にミサに行ったときは、英語と広東語を使っていました。その日の前日か翌日は、英語と中国語でやっていたようです。それ以外では、シンガポールで広東語を聞くことはほとんどなく、一度だけWoodland駅で耳にしたことがしかないです。それもchildrenのような英語が混ざっていました。
カナダ、アメリカ、イギリスなど欧米での広東語使用状況は僕はわからないので割愛します。
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