大学で習うラテン語古典ギリシャ語の授業ってどんな感じ?

言語学を活用して外国語学習

言語学の知見を活用して外国語を勉強するという趣旨で、私がここで言う言語学というものには比較言語学が含まれています。比較言語学とは昔一つの言語だったものが別れたものを研究する分野です。よく聞くラテン語からイタリア語などが生まれたというものもこの分野の範囲です。

以前、中国語、広東語、日本語、ベトナム語の比較言語学から見た類似点を紹介しました。ヨーロッパ語を勉強するなら、今回紹介するラテン語や古典ギリシャ語などの知識も現代語を学習する際に遠からず役立ちます。

一部の日本の大学にもラテン語・古典ギリシャ語の授業があります。僕が受けた授業もなかなか古典的でした。例文は古典の銘文がちらほら、毎週動詞や名詞の活用を試験していました。

 

大学の授業では『ラテン語初歩 改訂版』を使いました。この教科書には解答がついてないから独学はできません。

この教科書を使うなら、授業に出て講師の言う解答をしっかり記録しないといけません。

独学用で簡単なラテン語の教科書は『ニューエクスプレス ラテン語≪CD付き≫』が良いです。

ラテン語・古典ギリシャ語って難しい?

難しいです。一つの単語がたくさんの形に変わります(活用する)。これは別の機会に説明します。英語以外の外国語を知らない人には説明が面倒すぎるほどに難しいです。Nicolas Ostlerという言語学者によると、一つの動詞から106種類に変形できるといいます。

ちなみに、ラテン語とギリシャ語のどちらが難しいのか?僕は古典ギリシャ語の方が断然難しいと思う。大学の講師が言うには:

古典ギリシャ語は「草ボーボーで整えられていない」

のに対してラテン語は「(後世によって)整えられた言語」だそうだ。たぶん、動詞活用による変化などがラテン語は後世の人が手を加えて変化したのだろう。サンスクリットも後世の人によって整えられたらしいが、確か元より難しくなったとかなんとか。この情報は曖昧なので当てにしないでください。

ラテン語・古典ギリシャ語って役に立つ?

ラテン語を使うことは普段は滅多にありません。映画テルマエロマエでちょっと見ただけです。他では博物館美術館などの遺物芸術品で使えます。長崎の博物館にはオランダ語フランス語ラテン語で書かれた遺物(展示品)があり、それらの言語を勉強したことがあったので博物館が5倍面白くなりました。

また、ギリシャ語も博物館で使えます。古典ギリシャ語を学ぶ前に大英博物館で本物のロゼッタストーンを見たことがありますが、古典ギリシャ語を学んだ後に岡山と福岡で2つのレプリカを見た時の方が感動しました。大学で習った古典ギリシャ語が使えたからです。

ただし、授業では全部小文字のギリシャ文字を使っていたのにロゼッタストーンは全て大文字で、しかも分かち書きしていなかったから読みにくく、結局一言も解読できませんでした。気分だけはインディー・ジョーンズでした。

古典語を覚えるとヨーロッパ語が学びやすくなるが

ラテン語を学ぶとフランス語やイタリア語、スペイン語、ポルトガル語などを学ぶ時に覚えやすくなります。しかし、先にラテン語を学んでから現代語を学ぶのでは効率が悪いです。最初から直接現代語から学んだ方が得策、というか普通です。

 

しかし、英語を含むこれらヨーロッパ語の上級を目指すのであれば、ラテン語・古典ギリシャ語の知識があった方が長い目で見て効果的です。人類学(anthropology)のような高度な単語は古典ギリシャ語などから単語が構成されています。

古典語がわかると初めて見る英語(その他ヨーロッパ語等)の学術語・専門用語も何となく想像がつくようになります。例を以下に挙げます。

英語の中の古典ギリシャ語とその解説

以下はWikipediaのページを参考にしました。

http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Greek_and_Latin_roots_in_English

Anthropology

ἄνθρωπος (anthropos アントロポス) ギリシャ語の「人」という単語を使って「人類学」という学術語が作られています。この単語を日本語では「文化人類学」と翻訳することもありますし英語などのヨーロッパ語でもcultural anthropologyとも言います。

Psychology

ψυχή(psuchē プシューケー)これは「魂」という訳語で習いました。授業ではよく使われた単語なので、耳で覚えています。英語のつづりの一つにpsで書き始め、最初のpを読まない単語がありますが、ギリシャ語起源の単語の場合は、元々はΨと書き「プシュー」とpも読みます。

英語としてはps のpsychiatric、 ptで始まる Ptolemy さらにはphthから始まるphthalateなどの綴りは毒々しい不吉な見た目をしていますが、ギリシャ語などの外国語から入った単語なので英語としてみると一見いびつに見えるだけで元の言語では一般的な発音なのでしょう。

ちなみに、英語が世界の標準であり、これらの綴りは異常だと考えるのは偏った思想です。以前の英語はこれら古代ギリシャやローマ、アラビアなどから先進知識を輸入する際に単語も取り入れた結果、外国語の単語が英語に入ってきました。当時の感覚で言うと英語の方が世界の技術最前線から外れていた遅れた言語であり、今たまたま世界の覇権を握るアメリカの言語であるだけなのです。

Zoology

ζῷον(zōion)動物園のことをよくzooと言いますが、これは省略だと知っていますか?元はzoological parkと言い、zoologicalはギリシャ語起源です。

Acrophobia

ἄκρος(akros)ギリシャ語でアクロスは「高い」という意味で、~恐怖症をギリシャ語のphoboから来た-phobiaと英語でいいます。しかし、日本の子供も「高所恐怖症」という単語がわかるのに対し、英語のこの単語は医学用語なので英語圏の子供はわかりません。普通の英語ではI have a fear of heights.というそうです。

また、日本の子供はたとえこの言葉を知らずとも、「高所恐怖症」という漢字を見れば意味がわかりますが、英語圏の子供は普通古典ギリシャ語の素養はありませんので、わかりません。しかし、古典ギリシャ語を学べば学術用語も古典語の知識を駆使すれば初めてみる単語でもわかります。例えば、hydrophobiaという単語の場合、水素を意味するhydrogenが分かれば「水恐怖症」と意味だとわかります。

 

言語学は外国語学習に効果があることがおわかりになっただろう。

 

また、時々英語の書き物の中にラテン語が直接使われている場合もあります。ギリシャ語はアルキメデスで有名な「エウレーカ!Eureka!」以外見たことないです。

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