世界の言語にはどんな語順があるのか

この記事では以下の言語の語順を紹介します。興味ある項目だけどうぞ。

  • 英語
  • 中国語
  • 広東語
  • ベトナム語
  • インドネシア語
  • フランス語
  • ポルトガル語
  • エスペラント
  • ラテン語
  • ビサヤ語(セブアノ語)

もっとたくさんの言語の語順を知るには、太陽の塔がある大阪の万博記念公園内にある、国立民族学博物館の展示がおすすめです。言語の語順を選ぶと、その語順を持つ言語を音声付で紹介してくれます。展示室の各国語版『星の王子様』が置いてある部屋にあります。

国立民俗学博物館に行く途中に見える太陽の塔

英語の語順

英語はSVOの語順に比較的厳格な言語です。Little did I thinkやThe longer, the better.のような語順もあります。実際には詩や口語では割と自由に柔軟に語順が変わるようです。

疑問詞の位置が文頭と決められているのも英語が語順に厳格であると言われる特徴です。口語での

Say what?

Sorry for what?

などは「何が~なの?」と聞き返す時に現れるだけで、この形式から会話を始めることは通常ありません。

英語での主語の省略

英語でも主語を省略することがあります。

  • Want some?
  • Remember that?
  • Ready to get started?

3番目の例はwordpress.orgのサイトで実際に使われています。

英語で主語を省略するパターン

中国語の語順

基本は英語と同じSVOですが、形容の順番は日本語と同じ感じです。

The book that I bought yesterday

我昨日買的書/我昨天买的书

中国語を日本語と比較すると、前置詞と後置詞(てにをは)以外は日本語と近いのにも関わらず、日本人の中国語学習者の中にも英語の語順にする人が結構いるのは、面白い現象です。

我看书。

「私」+「読む」+「本」

我在书店看书。

「在书店(本屋で)」が動詞より前に置かれる。

我昨天下午在书店看书。

「昨日の昼に」が動詞や場所より更に前に置かれる。

目的語を取れない動詞を使う時は「把」や「将」を使って動詞の前に置く。これが英語と違うところです。

把窗帘关了吧。

「を」+「カーテン」+「閉める」+「してしまう」+「命令とかの意味」

=「カーテンを閉めて」

红色的书

这本书

「先」と「多い」の時は他の言語では見たことない直感的ではない感じ。

你可以先去买书。

你多吃一点吧。

形容句が複雑な文は中国語ではつくれない気がします。見たことないので、ないと思います。

中国語の自由な語順

また、臨機応変に語順を換えることができるので戦前の世代には「支那語には文法がない」と言う人がいますし、欧米人の中にも「Chinese has no grammar.」と言う人がいます。そんなことありません。中国語にも文法はあります。

我要买那个。

那个我要买。

那个要买。

どれでも意味が通じます。ただ、「香港去过。」のような言い方は口語ではよくこのような言い方をしますが、文字に起こすと見慣れない違和感を覚えます。日本語でも「香港は行ったことない」という文と「香港に行ったことない」の両方OKなのと同じ感じがしますが、日本語は意味の区別が明確にあります。

広東語の語順

中国語との語順の違いは多くはありませんが、あります。

食先。(中国語では先吃。)

「食べる」+「先に」=さきに食べて

食多啲。(中国語では多吃一點兒。/多吃一点儿。)

「食べる」+「たくさん」+「もっと」=たくさん食べて

広東人が話す中国語も時々この順番になります。

giveの後ろに「人」+「もの」の順番が中国語と広東語で違います。

広東語:俾杯啤酒我

中国語:給我一杯啤酒.

詳細は過去の記事にあります:広東語とはーー中国語と比較した際の特徴

ベトナム語の語順

SVOで、形容詞も後から修飾するというSVOの中でもスタンダードな語順。

ちなみに、SVO言語は後ろから修飾するようになっているけど、簡略化が進めば英語や中国語みたいに前から修飾になるという話を聞いたことあるけど、どういう理論か詳しいことは知りません。

Tôi đọc sách.

「私」+「読む」+「本」

Tôi đọc sách ở nhà sách.

「で」+「本屋」

Tôi đọc sách ở nhà sách buổi chiều hôm qua.

・・・「昼」+「昨日」

sách màu hồng

「本」+「色」+「赤」=赤い本

quyển sách này

「冊」+「本」+「この」

但し、漢語(中国語)由来の単語は中国語の順番のままです。下の例は漢語(中国語)由来ではなく、明治時代に日本で創られた和製漢語由来の単語です。

chủ nghĩa 「主義」

xã hội 「社会」

しかし、形容詞のように使う時にはベトナム語の順番になります。もし、ベトナム語を漢字で書くことがあれば語順がひっくり返りまくって読みにくくなりそう。ためしに、ベトナムの正式名称をベトナム語で書いた、nhà nước cộng hòa chủ nghĩa xã hội VNを漢越語(漢語由来の単語)を漢字にしてみると

 

nha nuoc共和主義社会越南

(nhà nướcは漢語由来ではない純ベトナム語なので漢字には置き換えられません)

 

となり、読みにくく、一目で意味がつかみにくいです。こういうのって慣れるものなのでしょうか。というのも、中国語と日本語では語順が違うけれども、中国語ができるようになると、中国語の語順に慣れるが、日本語が読みにくくなるということはありません。

Ăn nhiều đi.

広東語や英語の語順と同じ順番です。

疑問詞の位置は文頭に置く規則はありませんが、未来を表すか過去を表すかによって位置が変わります。文法で未来形や過去形などの時制を表すことはありません。中国語だけでなくベトナム語、インドネシア語などの言語でも同じです。

Bao giờ đến VN?

Bạn đã từng đến VN bao giờ chưa?

広東語とベトナム語は音が似ていますがお互いに通じません

インドネシア語

ベトナム語と同じく、SVOで形容詞が後に来ます。インドネシア語はベトナム語と大部分が同じ語順です。但し、yangという単語はベトナム語に対応するものがありません。yangは中国語の「的」に似た働きを持っています。この単語が入ることで「安物」と「安いやつ」の区別のようなニュアンスを生みます。

 

また、Be動詞に相当するものがないのが普通なので、「A B」とならべるだけで「AはBです」になります。

Saya orang Indonesia

「私」+「人」+「インドネシア」

否定の時は

Saya bukan orang Indonesia

「私」+「非ず」

Be動詞に対応するものを使わないと習いますが、adalahという単語を入れることもできます。下の二つのサイトでadalahを使った文がありました。

BUUSU adalah comminitas...

これらのサイトはインドネシア語で書かれた外国語学習のサイトを紹介するブログなので、インドネシア語ネイティブの自然なインドネシア語のはずです。

フランス語

SVOが基本なのは英語と同じですが、違いがあります。

Je lit un livre.

「私」+「読む」+「一冊」+「本」

「それ」や「私に」などの代名詞になると、順番が変わります。フランス語で「愛している」はジュテームとカタカナで書かれますが、フランス語でJe t'aime.と書きます。JeがIで、t'aimeはte aimeに分けられ、teがyou(「あなたを」という意味の目的格)、aimeがI love(私は愛するという意味の1人称単数現在)。この文のように代名詞の時だけ順番が変わり、SOVのように思えます。

形容詞は後ろに置く場合が多いのですが、一部のよく使われる形容詞は前に来ます。

un livre vert

「一冊」+「本」+「緑」

un grand livre

ce livre

「この(その、あの)」+本

ポルトガル語

語順はSVO。フランス語で見たような代名詞の位置が、ブラジルの口語とヨーロッパのポルトガル語(ポルトガルのポルトガル語)とは違う語順になることがあるらしいです。ソースは。しっかり学ぶポルトガル語―文法と練習問題 (CD book―Basic language learning series)

 

ポルトガル語で「愛している(I love you.)」は

Eu te amo.

とフランス語と同様に、te(あなたを)が動詞より前にあります。しかし、ブラジルのポルトガル語入門(p67)によると、

一般に文頭に置くことを避けます

とあります。ポルトガル語では英語とは違い主語の省略ができ、省略する場合などには語順がSVOだけでなく、SOVやSOOVになることがあります。

Eu compro um livro na livraria .

I buy a book at the bookstore

「私は」+「それを」+「買う」

Já o li.

「既に」+「それを」+「(私は)読んだ」

疑問詞は文頭に置かれ、前置詞がある時は前置詞が更に前に置かれる。この点でも疑問詞が文頭に置かなくても良いフランス語とは違います。

 

余談ですが、ブラジルポルトガル語は2人称の活用をせず、3人称を使いますので、動詞の活用がフランス語より少ないです。

参考にこのサイトI Love You in Portuguese | Portuguese Language Blog英語と比較してみてください。

エスペラントの語順

SVOを基礎としつつも柔軟に換えても良いとされる。「本が」はlibroなのが、「本を」になるとlibronと書くので、語順を換えても理解ができるのです。

Mi aĉetas uno libron je la librejo.

「私は」+「買った」+「一つの」+「本を」+「で」+「the」+「本屋」

「~を」の単語にnを付けるので下のようにたくさんの単語にnが必要になる文もあります。nなくても理解可能です。

Kiun ligvon vi parolas kiel vian gepatran lingvon?

「どの」+「言語」+「あなたは」+「話す」+「ように」+「あなたの」+「親の」+「言語」

=あなたは何語を母語としてお話になるのですか?

ラテン語の語順

語順はかなり柔軟。語順ではなく、単語の曲用で単語の役割(主語か述語か)あるからです。曲用とは、名詞や形容詞の語形が変わることです。下に挙げたpuellaも

Puellam

Puellae

と形が変わることで、「少女を」なのか「少女へ」なのかを示しています。日本語の「てにをは」を単語の形で表します。「てにをは」がはっきりしているので語順が変わってもいいというのは日本語と同じです。

インド・ヨーロッパ語の古典語にはこの曲用や動詞の活用がたくさんあるので表を見るだけで疲労感を覚えます。フランス語などの現代語も始めたばかりのことには圧倒されます。活用を調べたい時はLatin conjugationと単語で検索すれば表が出て来ます。

ただし、ラテン語初歩 改訂版のp9に

動詞が文末に来るのが普通の語順とされている

と書かれているように日本語のようなSOVが同じだとされています。しかし、よく見かけるラテン語の文の語順はSVOになっています。例えば、

REPETITIO EST MATER STUDIORUM.

Repetition is mother of studies

「繰り返し」+「Be動詞相当」+「母」+「学習の(複数)」

このことわざのような表現がいつ生まれたのかはわかりません。後世のヨーロッパ人が自分たちが慣れている語順に並び替えたからですか?どなたかご教示宜しくお願い致します。

Puellam amo.

「少女を」+「(私は)愛す」

また、主語も省略されているのが普通です。この動詞はamoでこの形で主語が「私は」というのがわかるからです。ラテン語で「私は」などの代名詞の主語はほとんど見かけません。有名なデカルトの「我思う、故に我あり」は

Cogito ergo sum.(cogito=私は思う、ergo=故に、sum=I am)

と書かれることが多いように、「私が」を表す「ego」は省略されています。デカルトが17世紀に出版した時にはego cogito ergo sum.と主語を省略していなかったようです。(再びソースはwikipedia)

また、ラテン語初歩によると

間接目的語は直接目的語の前に来るのが普通の語順とされている。

とあるように

Puellae rosam dono.

「少女に」+「花を」

Be動詞に当たるESTを省略してた文も見られる。サンスクリットやパーリ語の授業ではむしろBe動詞に相当するものを初級の授業であまり見なかった。

ラテン語の会話を知るにはニューエクスプレスのラテン語の教科書が良いです。漫画・映画テルマエ・ロマエの世界です。ラテン語で会話するってローマ教皇とでも謁見する予定がある人なのでしょうか。普通の一般市民ならばラテン語の会話より、名文を暗記するだけで十分です。それ以外で古典語の会話をやりたい人は常軌を逸しています。

ビサヤ語(セブアノ語)

これまではSVOやSOVの言語を紹介してきましたが、世界にはVSOの言語もあります。

つまり、動詞+主語+目的語の語順で並びます。

日本語の口語でも「わかるの?君は」のような語順になることはありますが、VSO言語はその言語の標準的な言い方をする時に動詞が最初に来ますので、日本語などとは違います。

代表的な言語はフィリピンのフィリピノ語(タガログ語、フィリピン語)がよく挙げられます。今回は、フィリピンのセブ島などの地域で使われるビサヤ語(セブアノ語)を例として挙げます。

 

Ganahan ko.

(好きだ+私は)

Ganahan pud ko.
(好きだ+また/も+私は)

Nagpuyo ko sa Tokyo.

(住む+私は+に+東京)

語順がVSOであること以外にも、受動態(受身形)がよく使われることも面白いと思いました。

Asa gibutang?

(どこ+置かれる)gi-で動詞を受動態に活用します。

どこに置いたの?・どこに(データを)保存したの?

Kinsa'y iyang gihulat?

(誰が+彼・彼女の+待たれる人・もの)

彼女は誰を待っているの?

 

主語が最初でない言語は珍しいですが、だからと言って彼らの思考法が全然違う理解できない人種という訳ではありません。動詞が最初に来る言語を話しているフィリピン人ですが、SVOの英語という語順の違う言語を使いこなしている人も多いです。

 

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