NHK教育で7時に放送された地球ドラマチックという番組で取材されていた学者の本を偶然買って持っているので、紹介します。
Language: The Cultural Tool
Daniel Everett
Profile Books Ltd
http://www4.nhk.or.jp/dramatic/x/2014-08-24/31/11194/
他文明との接触のない言語
この本の著者、エベレット(Everett)教授の考えでは、他の文明との接触のなかったアマゾンに住む民族のピダハン語には数字や時間の概念などの表現が我々の言語と異なっていると言います。
特に特徴的なのがピダハン語(Pirahã)にはrecursionがないということです。言語学の定説ではRecursionは全ての言語にあると考えられていたので、エベレット教授の説は言語学界では批判を受けているとのことです。
エベレット教授はもう一度調査に行き、自身の仮説を検証するためのデータを集めに行こうと計画していましたが、エベレット教授が悪いことを企てているとブラジルの原住民保護機関(FUNAI)に対して吹き込んだ何者か(言語学者か?)による工作によって、エベレット教授はFUNAIに当該地区への立ち入りを禁止されてしまい、彼の研究は暗礁に乗り上げているようです。
recursionとは
文を続けることを指します。recurring dreamと言うと「何度も見る同じ内容の夢」のことと聞けば、recursionとの意味の関係も分かりやすくなるでしょう。
例えば以下のように文を限りなく繋ぐことができます。
- 彼がわかってたということを彼女が知っていたということを私が言ったということ....
英語の方が構造上分かりやすいです。
- He says she says I say...
言語と思考の関係
ある言語を話す人の思考は、話している言語に影響されるという考えがあります。
特に有名なのが、虹の色の数を言語によって識別している数が異なるということです。日本では虹は7色と言われますが、別の国の人が見ると5つだったり、6だったりするそうです。言語によって色の区切り方が違うので、その区切り方で虹の色を区別すると考えられています。
また、イヌイットの言語に英語ではsnowという単語の範囲に入ってしまう雪を様々に区別するということもあるらしいです。
雪の例は文化や気候による生活様式の違いなどが人の思考に影響を及ぼしているとも考えられますが、言語そのものが思考を決めるという意見もあり、上述のエベレット教授もこの一派なのです。
所謂、日本語は主語が省略できるから曖昧な思考になり、相手に対して婉曲に表現する術を身に着けたので、日本人は議論が下手になるという意見もありますが、この話に対しては私は短絡的すぎると思います。
<言語と思考>