日本人の日本人に対するイメージは外国由来だという説

日本人が日本人に対するイメージに影響を与えたものとして、面白い本を読みました。橘玲(たちばな あきら)さんによる『(日本人)』です。日本人の日本人像形成の要因の一つはアメリカ人による日本人研究の輸入によると分析されています。

外国と比較した日本像の例

ルース・ベネディクトの菊と刀

ルース・ベネディクト(Ruth Benedict)の『菊と刀』(The Crysanthemum and the Sword)の時代には日本研究の目的は、日本との戦争や占領を円滑に進めるためであり、欧米社会との違いを重点的に研究する必要がありました。それが本来の目的以外にも、現代日本人の日本人観として戦後の日本社会や現代に引き継がれていると言います。

ちなみに、ルース・ベネディクト自身は日本には一度も行かずに生涯を終えたとのことです。

新渡戸稲造の武士道

また、日本人が書いた日本人論の中にもある種の誇張のようなものもあります。新渡戸稲造の『武士道』が欧米に日本を紹介する時にも、アメリカで失われつつあった騎士道という古き良き伝統に似たものが日本には残っているというスタンスで書かれています。

また、異国情緒を掻き立てるものとして、キャラクターとしての「武士」や「切腹」が紹介されていると橘玲さんは指摘しています。

日本人だろうが外国人だろうが国を説明すると違和感ある

新渡戸稲造の『武士道』に限らず、加藤嘉一が中国で出版した本を読んでも、私はどこか違和感がありました。ひょっとしたら、私が日本のことを外国語で紹介しても、それを私自身が見直してみた時にも違和感があるものなのでしょう。

オリエンタリズムとステレオタイプ

アメリカ人が日本を想像する際に、ある種のオリエンタリズムを持ってしまいます。オリエンタリズムとは東洋に対して想像を抱いてしまう傾向という意味ですが、一般的には伝統が残っている懐かしいものや、文明が遅れているものを想像することが多いです。

オリエンタリズムに限らなくても、ステレオタイプというものも無意識のうちに干渉してきます。例えばシンガポール人の友人が「日本人もおしりをポリポリと掻くのか。全員が真面目な人種だと思っていた。」と言われたことがあります。

想像の異国像

オリエンタリズムのような勝手な想像を抱いてしまう原因の一つとしては、単純に知らない国に対して勝手に想像するからです。そして、自国以外の国を一つも知らない時には、自国に対するイメージも根拠がないのです。

自国しか知らない人には比較対象がないので、自国の特徴を客観的に判断する材料がないので、人から聞いたことを大げさに解釈してしまうのです。