帰納的外国語学習法とは
帰納法(きのう、inductive)的な教授法は外国語教育にはあまり使われていません。多くは演繹法(えんえき、deductive)で教えられています。
多くの場面で使われる演繹法では、
- まず文法などのルールを教え、
- そのルールが当てはまる例を与えられ、
- 最後に練習問題をします。
一方の帰納法では、
- 与えられたサンプルの違いや共通点を比較し、
- ルールを自ら発見します。
帰納的外国語学習法の例
- I speak English.
- He speaks English.
- She speaks English.
- They speak English.
- He spoke English.
- I spoke English.
...以下略
この場合は三人称単数(三単現)を発見させることが目的です。
speakに着目すると、speakのケースとspeaksのケースがあり、その違いを起こさせている原因を探します。
この例はかなり整えられたデータサンプルを使っているので、典型的な誘導的帰納法(guided inductive method)だと言えます。
帰納的外国語学習の体験
私が初めて中国語を学習し始めた時に帰納法的な学習法を実験的に試してみたことがあります。文法書を使わずに、フレーズ集と単語の意味だけから文法的規則を体得することができるのか当初の目的でした。
しかし、最初のページから理解できない構造があったので(我大学毕业)、すぐに耐えられなくなってこの手法をあきらめて文法書に頼ることにしました。今思えば、そのわからなかった箇所はほっといて、次に進めばこの実験を続行できたと思います。
しかし、同時に帰納法の非効率な面も改めて感じました。
まず比較サンプルとしてのデータを集める作業に時間がかかるので、その間に他の方法で外国語を勉強したほうが時間を効率的に使えると思います。
文法書や辞書がない・少ない場合は帰納法のみ
世界の小言語には文法書がない場合があります。
このような言語を学ぶ時に、私は帰納法的に習得しようと試みます。つまり、雑誌や新聞や音源などあらゆるリソースからサンプルを集めて似たものなどを比較して法則を導き出します。
さらに自分の認識があっているのかを確認するために、ネイティブに自分が作った文章を聞かせたり、見せたりします。ネイティブでも自分の言語の文法説明ができない人が多いので、自然か不自然かで判断してもらいます。
大言語の場合は帰納法を用いるためのサンプルも豊富なので試しにやってみることもできますが、小言語の場合は選択肢としてこの方法しかありません。
帰納法と演繹法のどちらが良いの?
どちらにも長所と短所があり一概には答えられませんが、基本的には演繹法が馴染みやすいのは確かだと思います。
但し、演繹法でまず理論を丸暗記しても理解できない場合などは、帰納的にアプローチしたほうが良いでしょう。例えば、
- 日本語の「は」と「が」の違い
- 英語のa/anとtheの違い
などは理屈から入るよりも例文を比較したほうがわかりやすいです。
参考文献:
Deductive vs. inductive language learning
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