英語の三単現のように、動詞の変化が三人称だけに関係していますが、他のヨーロッパ言語では三人称以外でも動詞が変化します。それを理解すると、英語の三単現の理由もわかるでしょう。
他のヨーロッパ語の動詞の変化
例としてフランス語とブラジル・ポルトガル語の動詞を挙げます。英語より動詞の変化が多いのがお分かりいただけると思います。このように比較してみると、英語の三単現のsは複雑な変化の名残のようなものと言えます。
動詞の変化のことを活用(conjugation)と言います。
フランス語の動詞の変化の例
sing. | pl. | ||
---|---|---|---|
je | pense | nous | pensons |
tu | penses | vous | pensez |
il (he/it) | pense | ils (they) | pensent |
elle (she/it) | elles (they) |
ポルトガル語の動詞の変化の例
sing. | pl. | ||
---|---|---|---|
eu | acho | nós | achamos |
você | acha | vocês | acham |
ele (he/it) | eles (they) | ||
ela (she/it) | elas (they) |
昔の英語の活用
古い英語は動詞の活用が現代英語より種類が多いです。動詞の活用が現代語では単純になったことがわかります。
sing. | pl. | ||
---|---|---|---|
ic | gā | wē | gāþ |
þū | gǣst | gē | gāþ |
hē | gǣþ | hīo (they) | gāþ |
『「原因」と「結果」の法則』という自己啓発本の原著に、現代英語の三単現の古い形が見られます:As a Man Thinketh (English Edition)
主語に合わせて動詞を変化させるのはなぜ
言語の構造の理由を求めても、「昔からそうだったから」以外の答えが出るとは限りませんが、存在意義を予想すると以下の通りです。
ポルトガル語などの現代語やラテン語などでは、英語で言うところのIやyou、heなどの主語を省略して言うのが普通です。主語を省略しても、動詞の形で主語が誰なのかがわかるような仕組みになっているので、動詞の変化が大事なのです。
三単現のsの存在意義はあるか
上では歴史的経緯から、なぜsがあるのかの話でしたが、視点を現代英語だけにしぼって考えます。現代英語で三単現のsはどんな働きをしているのでしょうか。
私の考察からは、三単現sはなくても誤解を起こさないという結論に達しました。
存在意義がないのに、三単現のsを使い続ける理由は、ネイティブがそれを聞いた時に自然だと思うからです。
単数の場合は意味区別に役立つ
- John, close the door.
- John closes the door.
上の2つで意味が違います。話す時はコンマ(,)を読めませんのでsがあるかないかで区別できます。
ただし、コンマは読めなくても、Johnの後で少し区切って言うので、区別できます。また、文脈や状況で命令なのか習慣なのかの区別はつく場合が多いです。
つまり、あってもなくてもあまりかわりません。
複数の場合は区別できなくなる
- John and Mary, close the door.
- John and Mary close the door (every time they go into the winery.)
複数形の場合はsがないので、命令形と習慣の区別がつきません。
つまり、結局文脈でわかるようになるので、動詞にsがあろうがなかろうが、話し手の意図はわかるのです。
<英文法>