ラテン語・古典ギリシャ語に引き続き、サンスクリット・パーリ語の大学の授業も紹介します。
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↑福岡市中央区にある勝立寺ではアルファベット表記のサンスクリット(梵語)が使われている。福岡のこんなところにもサンスクリットがあるなんて驚きです。
先ずサンスクリット、パーリ語とは
サンスクリット:古代インドの言語で、仏教とともに日本にまで伝わっている。梵語(ぼんご)とも呼ばれる。むしろ、田舎のじいさんばあさんはサンスクリットと言っても通じなくても梵語という名前は知っていたりします。
今もヒンドゥー教徒がおまじない(mantra)などで使っている。インド・ヨーロッパ言語で古典ギリシャ語やラテン語と相似した部分がある。
パーリ語:サンスクリットよりやや簡易化した、サンスクリットから派生した方言だと考えなさいと言われます。簡易化とは発音面で言うと例えば、サンスクリットでkarmaという単語はパーリ語のkammaに相当するような具合です。
中村元の『ブッダの言葉』の後ろ半分を占める解説に出てくるのは、このパーリ語です。
東南アジア一部の国々に影響を与えたサンスクリット・パーリ語
インド・ネパール辺りを発祥とする仏教が日本に到達するルートとは別に上座部仏教として東南アジアやスリランカに広がっていく際に使われた。今でもタイ語・ビルマ語・クメール語(カンボジア)にはパーリ語起源のものが多い。
東南アジアを知るための50章 (エリア・スタディーズ)のp255によると、
- サンスクリット: バーシャー
- パーリ語:バーサー
- タイ語: パーサー
- ラオ語:パーサー
- クメール語:ピアサー
- インドネシア語・マレー語::バハサ bahasa
- ビルマ語:バーダー
この様に比較言語学から見ると、サンスクリットを覚えると現代語が覚えやすくなるのですが、その苦労が現代語の外国語学習に対して割に合うとは言い難いです。言語学を研究する人はサンスクリットが必要ですが、現代ヨーロッパ語の外国語学習に役立てるための古典語ならラテン語が良い。より深い英語の理解には古典ギリシャ語が良い。サンスクリットは主に言語学の研究と仏教研究に必要で、外国語学習には役不足だろう。
サンスクリット・パーリ語は日本の大学でも学べる
サンスクリットは仏教系の大学のみならず、文学部や外国語学部でも教えられている。パーリ語は外国語学部や仏教研究をする部以外では教えているところは少ないと思う。
授業の内容
何かを暗記するということがない。ラテン語や古典ギリシャ語のように動詞の活用(変化パターン)をテストしたりせず、期末試験でも単語の意味が問題用紙に書かれていたり、すべての資料持ちこみが可能だったりする。これはもちろん講師によるのだが、多くの場合、サンスクリットとパーリ語の試験はどこも資料を使って文章の解読ができればいいとすることが多いと思う。一方で、ラテン語古典ギリシャ語の場合、活用を暗記させたり、名文を覚えさせたりする傾向がありそう。
授業ではラテン文字を使い、デーヴァナーガリーを使わないことが多い
授業ではインドの文字デーヴァナーガリーではなくアルファベットを使います。教科書もアルファベットが使われています。
サンスクリット・パーリ語は難しいか
古典ギリシャ語より難しい。何が難しいかと言うと文法の繁雑さ。
ちなみに、古典語は独学より断然講義に出た方が身に着く。独学だと古典語の複雑さで何度も挫折したくなるし、わからないところを質問できない。『サンスクリット語初等文法―練習題,選文,語彙付』←大学の授業で使ったこの教科書には解答がついていません。
『パーリ語文法』パーリ語の教科書なんて旧字体どころか、旧文語体で書かれている。(「かくの如く」のような日本語で書かれている)
サンスクリット・パーリ語で難しいところ
サンスクリット・パーリ語共通で最初につまずくのがサンディ(sandhi)。一部を紹介すると、「あ」と「い」が隣合うとき、二つが「え」となる。例えば、dogma illという二つの単語を一つの単語に合体させるとdogmellと変化する。サンスクリット・パーリ語を解読する時は、慣れるまでは意識的にこの作業を行い、その後単語の原形を予想して初めて辞書を引くことができる。
サンスクリット・パーリ語の教科書紹介
下の『初心者のためのサンスクリット文法1』には音源もついています。発音練習と簡単な文章だけで、mantra(おなじない)などはないです。サンスクリットの音を聞くには数少ない資料。僕は大学の授業指定の教科書よりこの本のほうがわかりやすかったので、動詞名詞の活用はこの本で調べていた。
インドの文字、デーヴァナーガリーで本格的に学ぶならこの本『サンダハンの入門サンスクリット』。私は大阪梅田の古書の街で4000円で購入して、文法の一番最初までやりました。やはり、独学は根気の勝負です。
日本の仏教が使っている梵字とデーヴァナーガリーは似ていますが、違います。
説明・例が一番多いものは辻直四朗先生の本のようです。基礎からみっちり、練習問題が豊富です。ジュンク堂などの書店では仏教のセクションに分類されています。