学校で英語を習うと、日本語と英語の語順の違いから、英文の後ろから翻訳していきます。この「翻訳」や「順番を入れ替える」行為によって英語の理解が遅くなる癖がつくことは過去の記事に書きました。
今回は語順に焦点を絞って説明していますが、単語レベルでの理解の仕方を別の投稿で書きました:
語順が違っても理解できる
実は、人は語順どころか、文法を全く無視した単語だけの情報だけでも大体の理解ができるという研究結果があるそうです。
『外国語学習の科学』p142によるとMerill Swain氏(1985)は
いわゆる内容語(名詞、動詞、形容詞など)を理解するだけで文法的知識を使わないでも内容理解だけならできてしまうことを指摘しました。
この指摘はCommunicative competence: Some roles of comprehensible input and comprehensible output in its developmentという論文に書かれているようです。
第二言語習得論の学者、クラシェン(Stephan Krashen)はこのように文法などがわからなくても理解できるインプットがあるから、それを理解する過程で外国語を習得していくことが可能だと(インプット仮説)主張しているらしいです。僕は『外国語学習の科学』で読んだだけで、論文をまだ読んでいないので「らしい」としか言えません。
非言語情報からの理解
また、内容語どころか、言語による情報よりも、非言語の要素から情報を理解しているという「メラビアンの法則」というものもあります。メラビアンの法則自体は俗流解釈だと言われていますが、非言語情報によって人が理解をしていることは他の研究でも明らかにしています。ちなみに、メラビアンの法則では
- 言語情報7%
- 聴覚情報38%
- 視覚情報55%
という割合で他人の意図を判断しているらしいです。どういうコミュニケーションなのかに依って、言語が占める割合も変わるでしょう。
つまり、文法や語順に頼らずに、状況など言語以外からも情報を集めることができ、またそういう情報から理解していくことを普段からしているということを表しています。
外国語学習の文脈では非言語情報とは、状況(文脈を含む)や表情、声などの情報のことです。だから、外国人の文法のおかしい文を聞いても正しく理解できるかはともかく、なんとか解釈できるのです。
とにかく語順が違っても言語を理解することは可能ということです。
外国語学習での語順を克服するには
語順が違うから英語を理解するには漢文の返り点のようなことをしないといけないと考えている人がいるでしょう。では、プロの通訳のように瞬時に外国語を理解できるようになった人たちはどうやって理解しているのでしょうか。
こういう人たちは大量のインプットに触れている(たくさん外国語を聞いて理解したり、読んだりした経験が豊富)から、翻訳しなくても理解できるようになっているのです。
つまり、翻訳せずに外国語を理解できるようになるにはたくさん外国語を理解する必要があるのです。脳科学(脳機能学)の観点から言うと、脳の伝達物質(シナプス)の経路(ニューロン)が最適化されるのです。
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