シンガポールやインドなどの準英語圏の人が英語が話せる理由

日本人は英語が話せないと言われる時の比較対象として、シンガポールなどの国を持ち出すのは間違いだと思います。

インド人やシンガポール人、マレーシア人、フィリピン人たちがなぜ英語が達者なのかというと、英語が身近で使われる国だからです。

その国と比較して、「日本の英語力はダメだ」と悲観しても比較になりません。

また、「彼らは間違えていても臆することなく話す」と言いますが、自分では間違えていると思っていなかったり、英語の方言を話しているという感覚の人もいるので、日本人が外国語として英語を話すのとは背景が違います。

1.英語圏

比較対象として、英語圏を考えてみましょう。

例えば、アメリカ人の両親の元にアメリカで育った人。ネイティブなので英語ができて当然です。日本人が子供の時から家族親戚友達等々、生活の中で日本語を覚えるのと一緒の環境です。

「アメリカ人は(ほぼ)誰でも英語を習得して話せるのに、日本人は英語が話せないから日本はダメだ」と考える人は普通いません。

準英語圏

シンガポール、インド、フィリピン、マレーシア等。アフリカの国も含まれます。多分、フィジーも。インターナショナルスクールに通う子供も同じような感じ。

これらの国でもアメリカ育ちのアメリカ人と比較すると、日常的に触れる英語の量は少ないですが、日本と比べると格段に多いです。

これら準英語圏の人と日本人を比較して「日本人は外国と比べて英語が下手だ」と言えません。

シンガポール

シンガポールは限りなく英語圏です。親によっては、親同士は英語以外の言語で話して、子供と話すときは敢えて英語で話す人も見かけました。学校教育は当然英語です。

私が見た印象的なシーンは、百貨店などのインフォメーションで何か尋ねる時に中華系同士でも英語を使っていたことです。

地元のテレビも英語のものがあるし、直接アメリカなどのテレビ番組も見られ、子供の頃から欧米の英語圏のものに親しんでいます。メールを打つ時は英語が多いということも聞きました。

そういう訳で、シンガポール人が英語が話せても全くすごくないんです。

シンガポールの土着訛りで判断して、「シンガポール人は恥ずかしがらずに堂々と英語を話している。英語ネイティブじゃないのにすごい」と考えている人もいるようですが、シンガポール人は英語ネイティブなので、英語を話すことは特別なことではありません。

シンガポール人は何語を話しているのか 動画あり

インド

インドもシンガポールほどではないとしても、英語を使う頻度が多いです。授業はもちろん、ほとんどの全ての用事を英語で行う私立学校もめずらしくなく、インドのエリート層では英語ができる人が多いです。

その背景には長い植民地時代の影響で英語でものを書くということが一般的になっているということの他に、国内にたくさん言語があって、英語が便利だということも関係していると言われています。

インドと同じで、パキスタンやネパールなどの周辺の国でも英語が話せる人が多いです。

フィリピン

フィリピンでは広告や標識、スーパーでの表示、新聞、テレビなどは身の回りのほとんどが英語で書かれています。日常的に英語を見ることが多いです。新聞も英語で書かれたものが多いので、地元の人も英語を読む機会が多いと思われます。教育も行政も英語で行われます。

つまり、フィリピンでは日常的に英語を使います。

現地語を話す時にはかなり英語がまじり、現地語での言い方を尋ねられてもわからないケースも珍しくないです。

ちなみに、フィリピンでは国語と定められているフィリピノ語は、人口の約40%が母語としているタガログ語とほとんど同じだと言われています。しかし、それ以外の国民は別の言語を母語としているのでフィリピノ語は母語ではありません。例えば、セブなどの地域ではビサヤ語が話されており、現地人に聞くとタガログ語はテレビで覚えたと言います。

私は台湾、シンガポール、香港でフィリピン人の従業員の方と出会ったことがあり、みな英語を使って仕事をしていました。中国語などの現地語が話せない人にしかあったことがありません。

フィリピンは海外からの送金(remittance)が非常に多い国で、国外で仕事をする人が非常に多いです。

マレーシア

マレーシアも民族が単一でないこととイギリスによる植民地時代が関係していて、マレーシア人同士でも英語を使うときがあるようです。

ただ、シンガポールと違うのは格差が大きくて、英語ネイティブな人もいれば、全くダメな人や、間違いだらけの人もいました。例えば、「退屈だなー」を「I boring.」などと間違えて使っていました。

以前、マレーシアの留学生と日本で会った時には、マレーシア人同士で議論する時は英語で話していました。

準英語圏では英語格差が大きい

実際は、インド、フィリピン、マレーシアのどの国にも英語を話せない人はたくさんいて、英語格差(English divide)と言われます。英語どころか自分の言語を読めない文盲すらいます。

一方で話せる人にとっては生活の一部に英語があるため、彼らにとってみれば、特別なことでもありません。学校で先生が使うのが英語だというだけです。

因みに、香港の新聞の付録でnear-nativeという言葉を見かけました。シンガポール人を除くと、以上の国々の英語話者はこの部類に含まれるのかもしれません。正直、この単語の指す範囲はよくわかりません。

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